被災地での健康を守るために

被災地での健康を守るために
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/disaster.html

厚生労働省

平成23年3月15日版
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平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震は、未曾有の大災害であり、多くの尊い命が失われたり、様々な健康被害が発生しています。震災直後の救命救急医療の提供が重要である一方で、今後、被災地での避難所等における生活が長期に及ぶ可能性もあり、その際にも様々な健康への影響が懸念され、健康を守るための対策が重要です。

避難生活の際に、病気にかからないよう、また、できるだけ健康に過ごしていただくため、大切なことを以下にまとめました。被災者を支援する方々にも、これらのことを知っていただき、ご配慮いただくようお願いいたします。

1.生活・身の回りのことについて
(1) 寒さへの対策
•できるだけ、暖房を確保するほか、毛布を確保したり、重ね着するなどして、暖かく過ごせるようにしましょう。寒い中、外にでる場合は短時間にするなどします。また、乳児や高齢者は特に寒さに弱いので、周囲の配慮が必要です。
(2) 水分について
[1] 水分の確保
•様々なストレスや、トイレが整備されないことが原因で、水分をとる量が減りがちです。また、寒冷と乾燥は脱水状態になりやすくします。特に高齢者は脱水に気付きにくく、こうした影響を受けやすく、尿路の感染症心筋梗塞エコノミークラス症候群などの原因にもなるので、しっかりと水分をとるようにしましょう
[2] 飲料水の衛生
•飲用にはペットボトル入りミネラルウォーター又は煮沸水を使用し、生水の使用は避けましょう。
給水車による汲み置きの水は、できるだけ当日給水のものを使用しましょう。
•井戸水をやむを得ず使用する時は、煮沸等殺菌することに気をつけましょう。
(3)食事について
[1] 栄養をとる
•できるだけ、いろいろな食物を食べるようにしましょう。寒いときにはより多くのカロリーが必要です。
[2] 食品の衛生
•食事の前には、流水が使えるときは、手洗いを励行しましょう。
•食料は、冷暗所での保管を心がける等、適切な温度管理を行いましょう。
•加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱しましょう。
•調理器具等は使用後にできるだけ洗浄しましょう。
•下痢や嘔吐等の症状がある方は、食品を取り扱う作業をしないようにしましょう。
(4)トイレの衛生
•利用者の数に応じた手洗い場とトイレを設置しましょう。やむを得ない場合には、野外にトイレゾーンを設けることも可能ですが、排せつ物による環境汚染が発生しないよう工夫してください。可能な限り男性用、女性用を分けるなど利用しやすいようにしましょう。
•使用後は、流水が利用できるときは手指を流水・石けんで洗い、消毒を励行しましょう。
•トイレは、定期的に清掃、消毒を行いましょう。
※ 消毒の方法についてのより詳しい情報は別添1へ

(5)生活環境
[1] 室内の環境
•定期的に清掃を行うことに心がけましょう。
•病気の方、ご高齢の方に配慮しつつ、寒冷に十分に配慮して換気をしましょう。また、分煙にしましょう。
•避難生活が長期に及ぶと、布団にダニが繁殖し広がりやすいので、定期的な清掃のほか、できれば、布団・毛布等の日干しを行うことが望ましいです。
[2] 屋外の環境
•避難所のゴミは定期的に収集して、避難所外の閉鎖された場所において管理してください。
[3] その他
•こころのケアのためにも、できるだけプライバシーを確保できる空間や仕切りなどを確保しましょう。
2.病気の予防
(1)感染症の流行を防ぐ
避難所での集団生活では、下痢等の消化器系感染症や、風邪やインフルエンザ等の呼吸器系感染症が流行しやすくなります。

避難所の生活者や支援者は、こまめに手洗いを励行するよう心がけてください。可能であれば、擦り込み式エタノール剤やウェットティッシュを世帯単位で配布するのが望ましいです。

発熱・せきなどの症状がある方は、避難所内に風邪・インフルエンザを流行させないために、軽い症状であっても、マスクを着用しましょう。

下痢の症状がある方は、脱水にならないよう水分補給を心がけましょう。また、周囲に感染を広げないように、手洗いを励行してください。

これらの症状がある方は、できるだけ速やかに医師の診察を受けてください。可能であれば、入院を含む避難所外での療養を検討しましょう。

また、けがをした場合には、そこから破傷風に感染するおそれがあります。土などで汚れた傷を放置せず、医療機関で手当を受けるようにしてください。

(2)一酸化炭素中毒の予防
一酸化炭素中毒の恐れがあるので、屋内や車庫などの換気の良くない場所や、窓など空気取り入れ口の近くで、燃料を燃やす装置(発電機、木炭使用のキャンプストーブなど)を使用しないようにしましょう。一酸化炭素は無臭無色であり、低い濃度で死亡する危険があります。

暖房を使用する場合には、換気に心がけましょう。

(3)粉じんから身を守る
家屋などが倒壊すると、コンクリートや断熱と耐火被覆に用いられた壁材などが大気中へ舞ったり、土砂などが乾燥して細かい粒子となります。これら粉じん等を吸い込むと気道へダメージを与えます。有害な粉じんはとても細かいので、身を守るためには防じんマスクのような特殊なマスクが必要です。解体作業等は、装備を調えた上で行ってください。

(4)エコノミークラス症候群にならないために
食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が足から肺や脳、心臓にとび、血管を詰まらせ肺塞栓や脳卒中、心臓発作などを誘発する恐れがあります。この症状をエコノミークラス症候群と呼んでいます。

こうした危険を予防するために、狭い車内などで寝起きを余儀なくされている方は、定期的に体を動かし、十分に水分をとるように心がけましょう。アルコール、コーヒーなどは利尿作用があり、飲んだ以上に水分となって体外に出てしまうので避けましょう。できるだけゆったりとした服を着ましょう。また、禁煙は予防において大変重要です。

胸の痛みや、片側の足の痛み・赤くなる・むくみがある方は早めに救護所や医療機関の医師に相談してください。

エコノミークラス症候群についてのより詳しい情報は別添2へ。

3.こころのケア
今回の地震のように大変重いストレスにさらされると、程度の差はあっても誰でも、不安や心配などの反応が表れます。まずは休息や睡眠をできるだけとるようにしましょう。

これらの不安、心配の多くは時間の経過とともに回復することが知られています。

不安や心配を和らげる呼吸法として、「6秒で大きく吐き、6秒で軽く吸う、朝、夕5分ずつ」行う方法もあります。実践してみましょう。

しかし、

1)心配で、イライラする、怒りっぽくなる
2)眠れない
3)動悸(どうき)、息切れで、苦しいと感じる

などのときは無理をせずに、まずは身近な人や、専門の相談員に相談してみましょう。

また普段からお互いに声を掛け合うなど、コミュニケーションを取るなどして心のケアをすることが大切です。

4.慢性疾患の方々へ
慢性疾患の中には、治療の継続が特に欠かせない病気があります。

人工透析を必要とする慢性腎不全、インスリンを必要とする糖尿病等の方は、治療の継続が必須ですので、今すぐ医療機関を受診できるよう相談してください。

※ 透析を受けられる医療機関等の情報は、各都道府県や日本透析医会の災害情報ネットワークhttp://www.saigai-touseki.net/で提供されています。この情報は適宜更新されます。

※ 主治医等との連絡が困難な場合の、インスリン入手のための相談連絡先は、(社)日本糖尿病学会のホームページhttp://www.jds.or.jp/で提供されています。

高血圧、喘息、てんかん統合失調症等の慢性疾患の方も、治療を中断すると、病気が悪化する恐れがあるので、医師・保健師・看護師等に相談してください。

なお、被災者が健康保険証を持っていない場合も、医療機関の受診は可能です。

5.妊婦さん、産後まもないお母さんと乳幼児の健康のために
妊婦さん、産後まもないお母さんと乳幼児は、清潔、保温、栄養をはじめとする健康面への配慮や主治医の確保について、保健師などに相談し情報を得ておくことが必要です。

また、災害により受けたストレスや特殊な生活環境は、母子に様々な影響をもたらす可能性があります。そのため、特に産前産後のお母さんの心の変化や子どものこれまでと異なる反応や行動に気を配ることが必要です。また、授乳時などに短時間であってもプライベートな空間を確保し、話しかけやスキンシップを図ることが大切です。このための空間を確保するため、周囲も配慮しましょう。なお、哺乳瓶を使用する場合、煮沸消毒や薬液消毒ができない時は、水でよく洗って使いましょう。

自ら心身の健康状態をチェックし、次のような症状や不安な事があれば、医師・助産師・保健師等に相談してください。場合によっては精神的(メンタル)ケアが必要なこともあります。

◎注意した方がよい症状
妊婦さん
•お腹の張り・腹痛、膣からの出血、胎動(お腹の赤ちゃんの動き)の減少、浮腫(むくみ)、頭痛、目がチカチカするなどの変化を感じた場合
•胎児の健康状態、妊婦健診や出産場所の確保に関する不安などがある場合
産後間もないお母さん
•発熱、悪露(出血)の急な増加、傷(帝王切開、会陰切開)の痛み、乳房の腫れ・痛み、母乳分泌量の減少などがある場合
•気が滅入る、いらいらする、疲れやすい、不安や悲しさに襲われる、不眠、食欲がないなどの症状がある場合
乳児
•発熱、下痢、食欲低下、ほ乳力の低下などがある場合
•夜泣き、寝付きが悪い、音に敏感になる、表情が乏しくなるなどいつもの様子と異なるなどのことが続く場合
幼児
•赤ちゃん返り、食欲低下、落ち着きのなさ、無気力、爪かみ、夜尿、自傷行為、泣くなどのいつもの様子と異なることが続く場合
※ より詳しい情報は、妊産婦・乳幼児を守る災害対策マニュアル(東京都福祉保健局少子社会対策部家庭支援課)http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/saitai_guideline/index.htmlや、命を守る知識と技術の情報館(兵庫県立大学http://www.coe-cnas.jp/index.htmlで提供されています。

詳しくは
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/disaster.html


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