受動喫煙に関した訴訟とその判決

【裁判所が初めて受動喫煙の害を認定!!】

受動喫煙による健康被害を否定する研究がたばこ産業の資金提供によるものであって客観性と正当性を欠くものであるとのわれわれの主張を認めたものであり、もはや受動喫煙による健康への影響の存在は否定のしようがないことを示したものである。

A分煙訴訟より


■■が提出した乙号証は内外のタバコ産業が研究者に資金を提供して、間接喫煙の有害性に関する研究を否定するために作成させたものであることが最近明らかとなった。被告が提出するこれらの論文は、いずれも東京地方裁判所に係属している■■区分煙訴訟において書証として提出されたものと同一である。この訴訟において、被告の■■区は、これらの書証はいずれも■■たばこ産業から提供を受けたものであると述べており、本件においても、被告は■■たばこ産業から提供を受けてこれらの論文を書証として提出しているものと考えられる。そして、上記訴訟における■■区の主張と本件における被告の主張も共通しており、■■たばこ産業の全面的援助のもとに組み立てられたものであろう。ところで、これらの論文を■■たばこ産業が提供するには根拠がある。それは、■■たばこ産業が、1981年以降公式に認められた受動喫煙の有害性をなんとか否定し、たばこ対策の推進による販売量の減少を食い止めて、自己の利益を確保しようとする強い動機があるからにほかならない。果たして、■■たばこ産業が提供した論文は、実は国内外のたばこ産業が研究者に資金を供与して、間接喫煙の有害性に関する研究を否定するために作成させたものであることが最近明らかとなった。本件で被告が提出する論文の類はそのような経過で作成されたものであって、中立性を欠いた偏狭な立場で作成されたものばかりである。そのことは、一つは、論文自体に示されている。英文の論文には、謝辞(acknowledgement)が添えられることが多いが、そこに資金提供の事実が述べられている(被告が提出する翻訳文では、これらの部分が周到に削られている)。

 たとえば、乙17-1の謝辞(acknowledgement)には、次のような記載がある(p99)。Supported in part by the Tobacco Institute, this assay represents the independent thought of authors alone.(この分析は、一部、たばこ協会(Tobacco Institute)の援助を受け、著者の独立した考えを単独で表わしたものである。)

 また、乙18-1にも次のように記載されている(p23)。

The funding of this study was made available to Corning Hazleton by the Center for Indoor Air Research(CIAR), Linthicum,Maryland,United State.

(この研究の資金は、アメリカ合衆国メリーランド州リンシカム(Linthicum)の屋内空気調査センター(CIAR)によって、コーニング=ハツルトン(Corning Hazleton)に提供された。)

 乙19-1も同様である(p212)。

The funding of this study was made available to Covance Laboratories Ltd.by the Center for Indoor Air Research(CIAR, Linthicum, Md., USA).(この研究の資金は、屋内空気調査センター(CIAR。アメリカ合衆国メリーランド州Linthicum)によって、コヴァンス研究所(Covance Laboratories)に提供された。)

 たばこ協会(Tobacco Institute)というのはアメリカ国内のたばこ会社の団体であり、屋内空気調査センター(CIAR)というのはアメリカ国内のたばこ会社が寄り集まって、1988年に設立した機関である。後に述べるとおり、世界保健機関(WHO)などが一貫して受動喫煙が肺がんの原因になることを指摘し、2002年6月には同機関のがん研究部門(International Agency for Research on Cancer, IARC)は、受動喫煙の煙(involuntary smoking)を明白な発癌物質(Group 1)に分類するなど、受動喫煙の有害性を否定する研究を否定する政策をとり続けている。これは、これらの受動喫煙の有害性を否定する研究がいかに科学的根拠のないものであるかを何よりも雄弁に示している。

 そして、最近アメリカのたばこ会社などで公開された資料によれば、日本人研究者の■■および■■が、論文作成に先立つ1991年4月5日、屋内空気調査センター(The Center for Indoor Air Research, CIAR)に対して243,000ドル(約30,000,000円)もの資金提供の申し入れを行い、これをアメリカRJレイノルズ社、BAT社、リームスマ(Reemtsma)社、インペリアルタバコ社、ロスマン(Rothmans)社およびフィリップモリス社で協議を行い、最終的に総額190,500ドル(約23,000,000円)もの資金が提供されている。

 さらに、この資金援助にあたって、フィリップモリス社のスティーブ=パリッシュ(Steve Parrish)は、■■たばこ産業株式会社に対して協力依頼を申し入れており、そのなかで、「たぶん、CIARを利用して、このプロジェクトを隠したいのでしょう。このプロジェクトはEPAやOSH(注:受動喫煙対策を推進する米国政府機関)への対策として明らかに利用できるため、非常に重要で急ぐ必要がある」と述べている。

 そして、「このプロジェクトはクリス=プロクター(Chris Procter。BAT社主任研究員)が指揮するが、その存在は秘密にし、論文には明記すべきでない」などと述べ、同人を黒幕として■■と■■に研究させようとしていることをあからさまに語っている。

 このようにして、■■と■■は、たばこ業界から多額の資金提供を受けて、受動喫煙の有害性を否定する論文の作成に狂奔することとなる。本訴では、■■と■■の論文は提出されておらず、国内の研究者ではもっぱら■■の論文が提出されている。しかし、この■■も上記プロジェクトと強いつながりがある。すなわち、同人の論文「環境中たばこ煙による受動喫煙の疫学」(乙8)によれば、同人はクリス=プロクターと私信を交わしていることを明らかにしているのであり(p181)、上記プロジェクトの黒幕であるプロクターから、様々な示唆を受けていたのである。以上のとおり、被告が提出する論文は、たばこ会社の資金提供によってなされた研究ばかりであり、中立性・公平性を欠くものというほかない。



■■禁煙・分煙訴訟判決について(声明)

この判決はいくつかの点で意義を有する。その一つは、受動喫煙は様々な自覚症状による苦痛と生理学的反応の急性影響を引き起こすとともに、各種のがんや虚血性心疾患、呼吸機能の低下や成人の気管支喘息の悪化などのリスクを増加させるという慢性影響をもたらすことを認定したことである。被告■■は受動喫煙による健康への影響は証明されていないと主張して、その旨の論文や報告などを大量に提出したが、判決はこれらの各種報告等は「最新の知見によるものとは認め難い」として排斥した。これは、受動喫煙による健康被害を否定する研究がたばこ産業の資金提供によるものであって客観性と正当性を欠くものであるとのわれわれの主張を認めたものであり、もはや受動喫煙による健康への影響の存在は否定のしようがないことを示したものである。

■■禁煙・分煙訴訟弁護団   2005年1月3日

参考 意見書等:

参考 
たばこ会社の受動喫煙研究
たばこ問題を混乱させる研究者
BMJ(イギリス医学雑誌)受動喫煙の健康影響に関する影響力ある研究に対し、タバコ会社はどのように対応したのか
受動喫煙の害を隠すプロジェクト中止の申し入れ
Tsuda T. Igakusha ha Kogaijiken de Nani wo Shitekitanoka (How have the Medical Academes acted toward Environmental Problems?). Tokyo: Iwanami-shoten, 2004.
http://blog.goo.ne.jp/notobaccoday/e/79e3e92c693f399dc04b6463b17ed654

Sono IH (Kobe, Hyogo). An open inquiry was sent to Mr. Eiji Yano, Teikyo University.
http://blog.goo.ne.jp/notobaccoday/e/56ceda83e6bcffb23be59e4c3cb799af

Kakezono H (Kashima, Saga). An open inquiry to president of Teikyo University: On the rotten practice of Yano, Professor in Medical School.
http://blog.goo.ne.jp/notobaccoday/e/4786075788fa06a909fff648d5c98bd1

Watanabe B. A paper to conceal the harm of passive smoking: Did Professor Yano, Teikyo University make commitment? Kin-en Journal (Journal for Smoking Cessation) No 148. 1 March 2003. Tabako Mondai Joho Senta (Information Centre for Tobacco Problems) Tokyo. http://www.tbcopic.org/index.htm
http://blog.goo.ne.jp/notobaccoday/e/0573df5a37693f5fd1519661959bbbd8

Yamaoka M (Sumoto, Hyogo). A confidential letter to President of Teikyo University: An inquiry to the research of a faculty in your school (in Japanese). April 21, 2003.
http://blog.goo.ne.jp/notobaccoday/e/2ffe0f3f412d5d903300c1152e0f9cc0

Kiriake Y. A project to conceal hazardous effects of passive smoking. Tokyo Local Court 1998 (wa) No 10379 Damage Compensation Claim for Tobacco Diseases. Evidence (Kou) No. 112. February 14, 2003 (Also available at http://www.geocities.co.jp/Beautycare-Venus/6700/sojyou/kou38.pdf ).

タバコ産業(BAT)に意見を提出しました。
http://blog.goo.ne.jp/notobaccoday/e/a43912160ddc99fce5f34598690766e2

How the tobacco industry responded to an influential study of the health effects of secondhand smoke
http://www.ac.auone-net.jp/~phnet/japanese_spousal_study.pdf

受動喫煙の害を隠すプロジェクト
http://www.ac.auone-net.jp/~phnet/kou38.pdf

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